「葛飾」や「葛西」といった地名にも使われる「葛」という漢字。
特に、漢字の形状など考えもせずにせっせとパソコン入力していますが…。
この「葛」という漢字をよ~く見ると…形状が違う漢字が複数存在しています…。
下のとおり。
間違いなく、形状が異なる漢字。
下の部分が、「人」の形と、「ヒ」という形状のものがあります…。
実は、この2つ以外に「人」ではなく「メ」の漢字もあるらしい…。
いったい、どっちの漢字が正しいのか?
ということで、この「葛」という漢字を徹底的に分析してみましたよ!
本記事では、「葛」の漢字表記で正しいのは「人」「ヒ」どっちなのか?また「メ」が正しいのか?その謎について徹底解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
1.「葛」の漢字!正しいのは「ヒ・人・メ」どっち?
最初に、「葛」の漢字はどっちが正しいのかをお伝えします。
下が、「人」。
この「人」の「葛」は、元々あった漢字で、「正字」です。
しかも、常用漢字であるため公用文などにも使用可能。
パソコンでは、「MS明朝体」や「MSゴシック体」などを選択することで、この「人」の「葛」が表示されます。
続いて、「ヒ」。
この「ヒ」の「葛」は、最初の「人」の漢字が変化して誕生した「異体字」。
「異体字」とは、元々誤字だった漢字が広く使われるようになり浸透してしまった漢字のことで、現在は誤字ではありません。
漢字は異なるのですが、読み方や意味は全く同じ。
たとえば、「幅」の異体字は「巾」で、「巾」の方も普通に使われています。
きっかけは「幅」を省略して「巾」と書いたのが始まりだと想定できますが、世間で普通に使われることでいつの間にか「正しい漢字」として認められたということ。
ですから、「ヒ」の「葛」も間違った漢字ではありません。
しかも、この「ヒ」の「葛」も常用漢字ですので、公用文などに使用しても大丈夫です。
「ヒ」の「葛」は、パソコンで「教科書体」や「行書体」などを選択することで表示可能。
余談ですが、東京都葛飾区では「人」の「葛」、奈良県葛城市は「ヒ」の「葛」を採用していますよ。
「人」と「ヒ」の「葛」についてお伝えしましたが、この他に「メ」の「葛」もあります。
「メ」の「葛」については、昔に使用された形跡があるものの、現在は使われなくなりました。
そして、現在「メ」の「葛」は辞書にも登録されていませんし、常用漢字でもありません。
ですから、使わない方がいいでしょう。
2.「葛」の漢字はなぜ複数種類あるのか?
「葛」という漢字は、現在2種類ありますが…。
なぜ、複数の漢字が普通に使われるようになったのか?調べてみました。
異体字が生まれる理由は様々ですが、一番わかりやすいのが、元々の正しい漢字を省略して生まれるケース。
前項でも紹介した、「幅」から「巾」になったケースです。
ただし、この「葛」の「人」と「ヒ」についてはどちらもそれほど複雑ではなく、省略する必要性が見当たりません…。
ですから、おそらくは単なる書き間違いがきっかけとなって「ヒ」の「葛」が誕生したのではないでしょうか…。
ですが、真相はわかりません…。
また、「異体字」ではないのですが、2種類の漢字が生まれるケースがあります。
たとえば、下の「令」という漢字。
このように、「マ」の「令」と「ア」の「令」が存在しますが、これ、どちらも正しい漢字。
そして、どちらかが異体字ということではありません。
この「令」が2種類ある理由は、16世紀ころの中国の印刷技術が発端です。
当時、木版印刷が行われるようになって、「明朝体」という字体が開発されました。
木の板に、明朝体の漢字を彫って紙に印刷するのですが…。
「令」の「マ」の部分が、鋭角で彫るのが難しく時間がかかったそうです。
そこで、字体を「令」の「マ」の部分を「ア」へ変更しました。
「ア」だと、最後の「、」が直線的に下に伸ばすだけなので、彫る時間を短縮できたそうです。
これは、大東文化大学の山口謠司氏のお話。
そして、話を「葛」に戻します。
「葛」の場合、「人」を「ヒ」に変更したことで、彫る時間が短縮されるとは思えません。
どちらも大差はないと思われます。
したがってこの説は、「葛」には当てはまらないような気がします…。
まとめ
以上が、「葛」の漢字の違いについてでした。
「葛」には、「人」の「葛」と、「ヒ」の「葛」がありますが、どちらも正しい漢字で間違いではありません。
「人」の方は元々あった漢字で「正字」、「ヒ」の方は後から生まれた「異体字」です。
どちらの漢字を使っても問題ありませんが、自治体などでは葛飾区や葛城市のように統一している場合も…。
そういった場合は、その自治体の意向にしたがってください。