「晴天」「天井」「天板」など、「空」や「上」という意味で使われる「天」という漢字。
今まで、何気なく使っていたのですが…。
実は、この「天」という漢字に関する論争があるらしい…。
それは、「天」という漢字は「上の横棒の方が長い!」と主張する側がいて…。
それに対し、「下の横棒が長い!」と強く訴えている人もいるという…。
自分は、上の横棒が長い「天」で覚えていたのですが…もしかして誤字??
上下…どっちが長いの…??
ということで、「天」という漢字を国の機関である文化庁を含め、徹底的に調査しましたよ!
本記事では、「天」という漢字の横棒について、上が長いのが正解か、下が長いのが正解なのか、わかりやすく解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
1.「天」の漢字は下が長い?どっちが長い?
結論から申し上げますと、「天」の漢字は上が長くても下が長くても正解です。
どっちも正解。
国の機関である「文化庁」も、「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」という公式文書で、どっちの「天」も「誤りではありません」とハッキリと明記しています。
この文書の内容については、次項でお伝えしますね。
現在「パソコン」などでは、上が長い「天」と、下が長い「天」、どちらも使われていますよ。
なかなか気づきませんよね…。
実は、フォントの種類によって上下の長短が違います。
「明朝体」や「ゴシック体」といった、印刷文字のようなフォントの場合は「上が長い」のがほとんど。
それから、「楷書体」や「行書体」といった手書き文字を元にしたフォントは、「下が長い」のが多くなっています。
試しに、パソコンで「天」という漢字のフォントを変更してみてください。
このフォントによる上下の長短の違いは、歴史が関係しています。
印刷技術がなかった昔は、下が長い「天」しかありませんでした。
ですから、元々は下が長い「天」が正解だったのです。
手書き文字を元にした「楷書体」「行書体」、このフォントの「天」は下が長くなっていますが、実はそのなごりということ。
そういった歴史を認識している人であれば、当然ですが下が長い「天」が正しいと主張しても不思議ではありません。
ですが、下が長い「天」が元祖だとしても、現在では上が長い「天」も間違いではないのでその字を「否定」することはできません。
しかも、現在の学習指導要領では、「天は、上が長い」と教育することとなっているのも事実です。
ということで、現在はどっちも正解ということ。
なぜ、元々の「天」は下が長く、のちに上が長くなったのか…?その理由は最後の項で説明しますね。
ところで…正解が2種類あると…。
「統一してもらわないと、気持ち悪い…」
「自分の子供に対し、どっちを教えるべき?」
このような思いを抱くのは当然ですよね…。
そういった場合は、学習指導要領に合わせて上が長い「天」を書くのが無難です。
世間でも、「上が長い天が正解」と思っている人の方が多数派なので、問題も起こりにくいでしょう。
2.「天」の漢字に対する文化庁の見解!
国の機関である「文化庁」でも、「天」の漢字について「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」の中で見解を示しています。
これは、平成28年2月29日付けの文書。
西暦だと、2016年ですね。
Q58
横画の長短
楷書の手本を見ていたら、「天」の下の横画の方が長い字や、「幸」の1番下の横画が一つ上の横画よりも長い字などがありました。
そのような書き方をしてもいいのでしょうか。
Aいずれの書き方も、手書きの楷書では伝統的に用いられてきた形であり、誤りではありません。
戦後から昭和50年代に掛けて用いられた教科書にも、そのような字形が見られます。
手書きの楷書では、横画の長短が違う、次のような書き方をすることがあります。
古くは、「天」も「幸」も、下に挙げる例の右側の方で書かれるのが一般的でした。
戦後の教科書を複数確認すると、横画の長短に違いがあるものが見られます。「天」や「幸」だけでなく、点画における長短の違いが漢字の判別に関わらない場合には、それを誤りであるとは言えません。
一方、「士」と「土」や「末」と「未」のように、点画の長短が入れ替わることによって別の字になってしまう場合には注意が必要です。
引用元:常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について
ということで、「誤りではありません」とハッキリ明記しています。
あと、「次のような書き方をすることがあります」「下に挙げる例の右側の方で書かれるのが一般的でした」とありますが…。
何を指しているのかわかりませんよね…。
指している部分が画像データでしたので、省略させていただきました。
その画像とは、下の横棒が長い「天」の画像と、一番下の横棒が長い「幸」の画像です。
3.「天」という漢字が2通りになった理由!
「天」という漢字が、なぜ上が長いものと下が長いものの2通りになったのか?
その理由は、「天」という漢字の成り立ちが関係しています。
「天」という漢字の元になったのが下の図。
これは、「人」「人間」を表しています。
ちなみに、「大きい」「巨大」の「大」という字も、この人の形が元。
ですから、「天」と「大」は似ています。
そして、話を「天」に戻しますが…。
人の「頭」の部分が「天」の一番上の横棒になりました。
これは、人間の「頭」の部分が体の一番上にあるため、上を意味する「天」という漢字の元になったということ。
そして、人の両手の部分が「天」の下の横棒になりました。
人の両足が、「天」の下の左右に広がった部分になったのです。
さてさて、そうなると…。
頭の横幅と、両手を広げた時の横幅…、どっちが長いのが自然か…。
普通の人間であれば、当然頭より両手の方が長いですよね。
この考えが、天の下の横棒が長い形状につながったといわれています。
それから「天」という漢字は、「天井」「天板」「天空」というように、「上」を意味しています。
そう考えると、「天」という漢字の一番強調すべきところはどこか…?
それは、一番上の横棒ですよね…。
これが、のちに一番上の横棒が長くなった理由といわれています。
16世紀ころに、中国で印刷技術が確立され「明朝体」という字体が誕生したのですが…。
もしかしたら、その頃にこの印刷用の明朝体に「上が長い天」が採用されたのかもしれません。
そう考えると、印刷用の明朝体やゴシック体などが、「上が長い天」であることと辻褄が合います。
まとめ
以上が、「天」という漢字の横棒についてでした。
「天」の漢字は、昔は下が長かったのですが、時代が進み上の方を長く書くようになりました。
現在は、どちらを長く書いても間違いではありません。
ただし、「どちらかに統一したい」ということであれば、学習指導要領に合わせて上が長い「天」をおすすめします。