「卒」と「率」。
「卒」は「卒業」の「卒」です。
「率」は「引率」の「率」。
ですが、なぜか「率直」という言葉もあれば、「卒直」と書かれることもあります。
さらに、「率先」が「卒先」と書かれることも…。
これは、不思議ですよね…。
ということで、「卒」と「率」の意味を徹底的に分析してみましたよ!
本記事では、「卒」と「率」の意味の違いや、「率直」と「卒直」、「率先」と「卒先」の違いなどについて、わかりやすく解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
1.「卒」と「率」の意味の違い!
最初に、「卒」と「率」の辞書による意味の違いをお伝えします。
【卒】
①㋐おわる。おえる。「卒業」㋑「卒業」の略。「大学卒」
②下級の兵士。ごく下級の職員。「卒伍・兵卒・従卒・獄卒」
③にわか。あわてる。「卒倒・卒然・卒爾・倉卒」
④しぬ。「卒去・昭和九年卒」
引用元:旺文社国語辞典
【率】
①ひきいる。先立ちみちびく。ひきつれる。「率先・引率・統率」
②にわか。あわただしい。軽はずみ。「率然・率爾・軽率」
③かざりけがない。すなお。「率直・真率」
④すべて。はてまでみんな。「率上」
⑤(「りつ」と読んで)わりあい。程度。「比率・利率・確率・打率・円周率」
引用元:旺文社国語辞典
こういった違いです。
「にわか」「あわてる」といった部分は共通した意味ですが、ほとんど違いますね。
問題は、「率先」と「卒先」、「率直」と「卒直」の違い。
次項では、この違いについて解説していきます。
2.「率先」と「卒先」、「率直」と「卒直」の違いとは!
「率先」は、人の先に立って事を行うこと。
つまり、「率」の意味①の「先立ちみちびく」に、「先頭」の「先」を加えたもの。
「率直」は、飾らずに素直でありのままであるさまのこと。
「率」の意味③の「かざりけがない。すなお」に、「まっすぐ」の「直」を加えたもの。
しかし、「卒」の方には「先立ちみちびく」という意味も「かざりけがない。すなお」という意味もありません。
では、なぜ「卒」という字で「卒先」や「卒直」という言葉が使われるようになったのか?ですよね。
これは、単純に「率」より「卒」の方が簡単だったから、というのが理由のようです。
いくら簡単だからといって、全く違う意味の字を当てるなんて…。
ちょっと、信じられませんよね…。
しかし、この件については国の機関「文化庁」が公式に解説してくれています。
語形の「ゆれ」について(部会報告)
第1部 漢字表記の「ゆれ」について
6
「率直」と「卒直」――「率」を「利率」「円周率」など「リツ」と使う場合には問題はない。
ところが,「ソツ」と使う場合,「率直」「率先」などの「率」に「卒」を使うことがこれまでも行なわれている。
これは,「率」の字画が複雑なので,音通によって簡単な「卒」でまにあわせるのであろう。
「卒直」「卒先」などは,今日では,漢和辞典にも記載するものがあるくらいである。
そこで,これを広げて,「軽率」「引率」「統率」などの場合にも,「卒」を使うことが考えられる。
そうすれば,「率」は「リツ」とだけ使って,「ソツ」には「卒」を使うようになっていくかもしれない。
引用元:文化庁:語形の「ゆれ」について(部会報告)
ということで、現在は漢和辞典にも掲載されているということで、一概に「卒先」や「卒直」は間違いとはいえないということ。
ですが、本来の漢字ではないことを覚えておいてください。
言葉は、時代が進めば変化するもの。
もしかしたら、「卒」は文化庁がいうとおり、さらに広がるのかもしれませんね。
3.「軽率」と「軽卒」は要注意!
ただし、「軽率」と「軽卒」は同じ意味ではありません。
「軽率」と「軽卒」を使う場合は注意が必要です。
「軽率」は、深く考えずに軽々しく物事を行うこと。
軽はずみな行動のことです。
「軽率な行動は慎むように」といった使い方をする「軽率」ですね。
一方の「軽卒」は、身分の低い兵士のことです。
現在はあまり使われない言葉。
「卒」は「一兵卒」という言葉があるとおり、「兵士」の意味があるのです。
ということで、「軽率」と「軽卒」では、意味が全く違いますので気をつけましょう。
まとめ
以上が、「卒」と「率」の意味の違いと使い分けについてでした。
「卒」と「率」は、ほぼ違う意味の言葉。
違う意味でありながら、「率先」を「卒先」、「率直」を「卒直」と書くことがあります。
これは、単純に「卒」が「率」より字が簡単だから。
もともと「卒先」と「卒直」は、誤った表記であったことを覚えておきましょう。
それから、「軽率」と「軽卒」は、省略したのではなく、全く意味が違いますよ。