漢字の「絆」。
2011年以降、随分と目にする漢字になりました。
ところで、この「絆」は「糸へん」に「半」と書くものと思いきや…。
よく見ると、「半」の「点々」が「\ /」の形ではなく、カタカナの「ハ」になっています…。
こうしてみると、「半」の点々が完全に違いますよね…。
「絆」の右側を、「\ /」の形で「半」と書くと誤字なのか?
ということで、日本の漢字を管轄する機関である、文化庁の見解を徹底的に調べてみました。
本記事では、「絆」の漢字の右側は「半」ではないのか?正しい漢字の「絆」を根拠も含めわかりやすく解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
1.「絆」の漢字の右側は「半」ではないの?
はじめに、正しい「絆」の漢字を単刀直入にお伝えします。
「絆」の漢字は、「\ /」の形の「半」で書いても間違いではありません。
もちろん、カタカナの「ハ」の形で書いても間違いではありませんよ。
つまり、「\ /」と「ハ」どちらも正しい漢字ということ。
「どちらも正しい漢字である」といった見解を示しているのは、文化庁です。
「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」という文書に、しっかりと明記されていました。
その文書の内容については、次項で紹介します。
漢字の「絆」は、基本的に「ハ」の形と思われがちですが、実は「\ /」の形のフォントも存在しますよ。
たとえば、下の「楷書体」や「行書体」は「\ /」の形の「絆」。
一方、「明朝体」「ゴシック体」「教科書体」などは、カタカナの「ハ」になっています。
余談ですが、「半」という漢字は、「明朝体」「ゴシック体」「教科書体」も含め全て「\ /」の形です。
同じ「半」という字でありながら、なぜか形が異なります。
不思議なことなのですが、これには理由がありますよ。
元々は、漢字の「半」は「\ /」の形だけで手書きされていたのです…。
それが、16世紀ころの中国で木版印刷が誕生し、それと同時に木版印刷用の字体として「明朝体」がうまれました。
「明朝体」の字体は、木の板に文字を彫る作業があることから、効率的な形に変更されたといわれています。
たとえば、「令」という漢字の明朝体の形は「マ」から「ア」に変更されました。
その作業の都合で、「半」も「\ /」から「ハ」に変更されたといわれています。
こういった理由で、漢字の「半」が、手書きは「\ /」で、印刷用の字体は「ハ」となりました。
当然ですが、「絆」など「半」を使う漢字は全て対象です。
「楷書体」「行書体」といった手書き文字がモデルの「絆」は「\ /」で、「明朝体」「ゴシック体」など印刷字体の「絆」が「ハ」なのは、こういった理由があったのですね。
その後、世界大戦後にGHQによる政治が行われるようになったのですが…。
その時に、漢字の数を減らすとともに、わかりやすくしようとする政策が進みます。
それが「当用漢字」の制定。
当用漢字に選出された漢字の「半」に関し、「\ /」と「ハ」の2種類あるのはまぎらわしいという理由で「\ /」に統一されます。
「絆」は当用漢字に選ばれることなく、使うことができなくなりました。
時代が進み、当用漢字の廃止とともに使用の制限が解除され、漢字の「絆」が復活します。
「絆」は「\ /」に統一されませんでしたので、「\ /」と「ハ」の2種類あるまま復活したということですね。
2.「絆」の漢字に対する文化庁の見解!
続いて、前項でも触れた「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」の内容を紹介します。
この文書は、平成28年(2016年)2月29日に文化庁から発信されました。
Q20
表外漢字の書き方
「絆」という字を手書きするとき、右の部分(つくり)は「半」の形にしてもよいのでしょうか。「絆」のように、常用漢字ではないものについて、書き方に迷ったらどうすればよいのでしょうか。
A常用漢字表にない字(表外漢字)についても、常用漢字の字形と共通する部分については、常用漢字と同じように書ける場合があります。
当指針では、表外漢字の詳しい扱いについては言及していませんが、常用漢字の書き方が参考にできる場合があります。「絆」の印刷文字においては、右の部分の点二つが「ハ」のように下部を広げる形が標準的な字体とされています。
しかし、手書きするときには、右の部分を「半」と同じように書いて問題ありません。
これは、歴史的な手書きの習慣とも一致する考え方です。
常用漢字表にない漢字については、「絆」のように、その構成要素が常用漢字の一部をなす構成要素と共通しているものであることが分かる場合には、常用漢字と同じ字体・字形で書くことができます。
なお、印刷文字の字形のままで書いても誤りではありません。
引用元:常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について
ということで、どういった書き方をしても問題ない旨が書かれています。
ちなみに、この文書の中に登場する「常用漢字」ですが、これは「当用漢字」のことではありません。
使用を制限する「当用漢字」が廃止され、使用の目安とする「常用漢字」ができました。
あくまでも「使用の目安」のことであり、公用文以外では自由に使っても問題ありません。
ただし、この文書では「常用漢字」について説明しているという意味です。
「絆」は常用漢字ではないのですが、親切に説明してくれているということ。
まとめ
以上が、漢字の「絆」についてでした。
「絆」の漢字は、「\ /」の形の「半」で書いても間違いではありません。
もちろん、カタカナの「ハ」の形で書いても間違いではありませんよ。
つまり、「\ /」と「ハ」どちらも正しい漢字ということ。
これから「絆」を手書きする時は、気にせずに堂々と書いてください。