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「売り上げ」「売上げ」「売上」の表記!どちらが正しい?

更新日:

 
「売り上げ」「売上げ」「売上」…。

「うりあげ」で漢字変換すると、この3種類が候補に…。

おそらくは、この3種類、全て正解なのだと思われます…。
 
 
では、どういった場面でどれを使うのがふさわしいのか…。

どれでも良いということなのか…?
 
 
 
ということで、「売り上げ」「売上げ」「売上」の送り仮名の付け方を徹底的に分析してみましたよ!

実は、使い方には明確なルールがありました!
 
 
本記事では、「売り上げ」「売上げ」「売上」の違いと使い分け方法について、わかりやすく解説していきます。

かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
 

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1.「売り上げ」「売上げ」「売上」の正しい表記!

最初に、「売り上げ」「売上げ」「売上」の使い分け方法を簡潔にお伝えします。

基本は「売り上げ」、これが正しい送り仮名

ですが、許容範囲として「売上げ」も使用可能です。

これは、「うりあげる」「うりあげよう」といった動詞の場合も同様

そして、「売上」を使う場面とは、「売上高」「売上金」など他の語と合わさる場合、この時は送り仮名を付けません
 
 
公用文の時は、必ず「売上げ」を使用します。

ただし、「うりあげる」「うりあげよう」といった動詞の場合は「売り上げる」「売り上げよう」としなくていけません

それから、公用文であっても「売上高」「売上金」など、他の語と合わさる場合は「売上」を使用します。

 
一言であらわすと、こういった違いです。

それでは、根拠なども含めてさらに詳しく紐解いていきますね。

支払い
 

2.一般的な「うりあげ」の正しい表記!(公用文以外)

公用文ではない、一般的な「うりあげ」の正しい表記からお伝えします。
 

①「うりあげ」の一般的な送り仮名の基本形!

「うりあげ」は、「売り上げ」と表記するのが基本です。

この裏付けは、日本の行政機関である内閣法制局の通知。
 
 
内閣告示第二号(1973年6月18日告示)の「送り仮名の付け方」に詳しく記載されています。

その告示の「複合の語 通則6(本則)」の内容が以下のとおり。

送り仮名の付け方 複合の語 通則6
本則
複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は,その複合の語を書き表す漢字の,それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。

〔例〕 (1) 活用のある語
書き抜く 流れ込む 申し込む 打ち合わせる 向かい合わせる 長引く 若返る 裏切る 旅立つ 聞き苦しい 薄暗い 草深い 心細い 待ち遠しい 軽々しい 若々しい 女々しい 気軽だ  望み薄だ

    (2) 活用のない語
石橋 竹馬 山津波 後ろ姿 斜め左 花便り 独り言 卸商 水煙 目印 田植え 封切り 物知り 落書き 雨上がり 墓参り 日当たり 夜明かし 先駆け 巣立ち 手渡し 入り江 飛び火 教え子 合わせ鏡 生き物 落ち葉 預かり金 寒空 深情け 愚か者 行き帰り 伸び縮み 乗り降り 抜け駆け 作り笑い 暮らし向き 売り上げ 取り扱い 乗り換え 引き換え 歩み寄り 申し込み 移り変わり 長生き 早起き 苦し紛れ 大写し 粘り強さ 有り難み 待ち遠しさ 乳飲み子 無理強い 立ち居振る舞い 呼び出し電話 次々 常々 近々 深々 休み休み 行く行く

引用元:内閣告示第二号:送り仮名の付け方 複合の語 通則6【本則】

「それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名」という記載があります。

これは、つまり「売る」「上げる」と分けた時の送り仮名を使うということ。

ということで、一般的な「うりあげ」の正しい表記は「売り上げ」です。
 

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②「うりあげ」の許容範囲の使い方!

「うりあげ」は、「売り上げ」と表記するのが基本なのですが、許容範囲として「売上げ」「売上」も使用可能です。

「許容」としたのは、「売り上げ」を「売上げ」や「売上」と表記したとしても、間違わないので問題ないでしょうということ。

これは、「送り仮名の付け方 通則6(許容)」に記載されています。

送り仮名の付け方 複合の語 通則6
許容
読み間違えるおそれのない場合は,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。

〔例〕
書き抜く(書抜く) 申し込む(申込む) 打ち合わせる(打ち合せる・打合せる) 向かい合わせる(向い合せる) 聞き苦しい(聞苦しい) 待ち遠しい(待遠しい) 田植え(田植) 封切り(封切) 落書き(落書) 雨上がり(雨上り) 日当たり(日当り) 夜明かし(夜明し) 入り江(入江) 飛び火(飛火) 合わせ鏡(合せ鏡) 預かり金(預り金) 抜け駆け(抜駆け) 暮らし向き(暮し向き) 売り上げ(売上げ・売上) 取り扱い(取扱い・取扱) 乗り換え(乗換え・乗換) 引き換え(引換え・引換) 申し込み(申込み・申込) 移り変わり(移り変り) 有り難み(有難み) 待ち遠しさ(待遠しさ) 立ち居振る舞い(立ち居振舞い・立ち居振舞・立居振舞) 呼び出し電話(呼出し電話・呼出電話)

引用元:内閣告示第二号:送り仮名の付け方 複合の語 通則6【許容】

「売上げ」や「売上」でも大丈夫、ということですね。

ちなみに、動詞の「売り上げる」「売り上げよう」の場合はどうなるのか?
 
 
この場合は、上記のとおり「申し込む」が「申込む」でも可能、「打ち合わせる」が「打ち合せる」「打合せる」でも可能となっています。

ですから、動詞の「売り上げる」「売り上げよう」は「売上げる」「売上げよう」でも大丈夫であると判断できます。

そもそも、「売り上げ」「売上げ」に「る」や「よう」を加えるだけなので、あえて説明が無いのかもしれません。
 
 
 
では、「売上」を使った動詞、「売上る」「売上よう」でもよいのか?

実は、「売上げ」の場合はどういった場面で使うべきかといった決まりはないのですが、「売上」を使うべき場面については、決まりがありますよ!

その決まりについては、次項をどうぞ。

接客
 

③他の語と合わせる時の送り仮名とは!

「売り上げ」も、他の語と合せて使う場合があります。

たとえば、「売り上げ」と「高」で「売上高」。

また、「売り上げ」と「金」で「売上金」もあります。
 
 
こういった、他の語と合わせて使う場合は、送り仮名は付けません

そういった、他の語と合せた場合の送り仮名については、「送り仮名の付け方 複合の語 通則7」に記載されています。

送り仮名の付け方 複合の語 通則7
複合の語のうち,次のような名詞は,慣用に従って, 送り仮名を付けない

〔例〕
(1) 特定の領域の語で,慣用が固定していると認められるもの。
ア 地位・身分・役職等の名。
関取 頭取 取締役 事務取扱
イ 工芸品の名に用いられた「織」,「染」,「塗」等。
《博多》織 《型絵》染 《春慶》塗 《鎌倉》彫 《備前》焼
ウ その他。
書留 気付 切手 消印 小包 振替  切符 踏切 請負 売値 買値 仲買 歩合 両替 割引 組合 手当 倉敷料 作付面積  売上《高》 貸付《金》 借入《金》 繰越《金》 小売《商》 積立《金》 取扱《所》 取扱《注意》 取次《店》 取引《所》 乗換《駅》 乗組《員》 引受《人》 引受《時刻》 引換《券》 《代金》引換 振出《人》 待合《室》 見積《書》 申込《書》

(2) 一般に、慣用が固定していると認められるもの。
奥書 木立 子守 献立 座敷 試合 字引 場合 羽織 葉巻 番組 番付 日付 水引 物置 物語 役割 屋敷 夕立 割合 合図 合間 植木 置物 織物 貸家 敷石 敷地 敷物 立場 建物 並木 巻紙 受付 受取 浮世絵 絵巻物 仕立屋

 (注意)
(1) 「《博多》織」,「売上《高》」などのようにして掲げたものは,《 》の中を他の漢字で置き換えた場合にも,この通則を適用する。

(2) 通則7を適用する語は,例として挙げたものだけで尽くしてはいない。したがって,慣用が固定していると認められる限り,類推して同類の語にも及ぼすものである。通則7を適用してよいかどうか判断し難い場合には,通則6を適用する。

引用元:内閣告示第二号:送り仮名の付け方 複合の語 通則7

「慣用にしたがって」とありますが、これは、世の中に浸透しているという意味です。

ちなみに、「売り上げ高」や「売上げ高」、「売り上げ金」や「売上げ金」と書くと、逆に違和感がありますよね。

ということで、他の語と合せて使う「売り上げ」は、「送り仮名をつけない」とありますので、必ず送り仮名は省きましょう。
 
 
要するに、「売上」が使えるのは「売上高」「売上金」のように、世の中に浸透している場合だけ

ですから、「動詞」の「うりあげる」「うりあげよう」を、「売上る」「売上よう」と表記してはいけません。
 

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3.公用文における「うりあげ」の正しい表記!

続いて、公務員の方向けに、公用文における「うりあげ」の正しい表記方法をご紹介します。
 

①公用文の場合の基本形の送り仮名とは!

公用文に限っては、「うりあげ」は「売上げ」と表記します。

絶対に「売上げ」だけ。

この裏付けは、内閣訓令第一号(2010年11月30日告示)の「常用漢字表(別紙)」に記載されています。

(別紙)公用文における漢字使用等について

2 送り仮名の付け方について

(1) 公用文における送り仮名の付け方は,原則として,「送り仮名の付け方」(昭和 48 年内閣告示第2号)の本文の通則1から通則6までの「本則」・「例外」,通則7及び「付表の語」(1のなお書きを除く。)によるものとする。
ただし,複合の語(「送り仮名の付け方」の本文の通則7を適用する語を除く。)のうち,活用のない語であって読み間違えるおそれのない語については,「送り仮名の付け方」の本文の通則6の「許容」を適用して送り仮名を省くものとする
なお,これに該当する語は,次のとおりとする。

明渡し 預り金 言渡し 入替え 植付け 魚釣用具 受入れ 受皿 受持ち 受渡し 渦巻 打合せ 打合せ会 打切り 内払 移替え 埋立て 売上げ 売惜しみ 売出し 売場 売払い 売渡し 売行き 縁組 追越し 置場 贈物 帯留 折詰 買上げ 買入れ 買受け 買換え 買占め 買取り 買戻し 買物 書換え 格付 掛金 貸切り 貸金 貸越し 貸倒れ 貸出し 貸付け 借入れ 借受け 借換え 刈取り 缶切 期限付 切上げ 切替え 切下げ 切捨て 切土 切取り 切離し 靴下留 組合せ 組入れ 組替え 組立て くみ取便所 繰上げ 繰入れ 繰替え 繰越し 繰下げ 繰延べ 繰戻し 差押え 差止め 差引き 差戻し 砂糖漬 下請 締切り 条件付 仕分 据置き 据付け 捨場 座込み 栓抜 備置き 備付け 染物 田植 立会い 立入り 立替え 立札 月掛 付添い 月払 積卸し 積替え 積込み 積出し 積立て 積付け 釣合い 釣鐘 釣銭 釣針 手続 問合せ 届出 取上げ 取扱い 取卸し 取替え 取決め 取崩し 取消し 取壊し 取下げ 取締り 取調べ 取立て 取次ぎ 取付け 取戻し 投売り 抜取り 飲物 乗換え 乗組み 話合い 払込み 払下げ 払出し 払戻し 払渡し 払渡済み 貼付け 引上げ 引揚げ 引受け 引起し 引換え 引込み 引下げ 引締め 引継ぎ 引取り 引渡し 日雇 歩留り 船着場 不払 賦払 振出し 前払 巻付け 巻取り 見合せ 見積り 見習 未払 申合せ 申合せ事項 申入れ 申込み 申立て 申出 持家 持込み 持分 元請 戻入れ 催物 盛土 焼付け 雇入れ 雇主 譲受け 譲渡し 呼出し 読替え 割当て 割増し 割戻し

(2) (1)にかかわらず,必要と認める場合は,「送り仮名の付け方」の本文の通則2,通則4及び通則6((1)のただし書の適用がある場合を除く。)の「許容」並びに「付表の語」の1のなお書きを適用して差し支えない。

引用元:内閣訓令第1号:(別紙)公用文における漢字使用等について

内閣訓令とは、公務員が公用文書を作る際の、民間企業の「文書作成基準」のようなもの。

この内閣訓令により、公用文における言葉の使い方の統一をはかるのですね。

その中では、「売り上げ」ではなく、「売上げ」と表記するように記載されています。

税務署
 

②公用文でしかも他の語と合わせる時は?

公用文の基本形が「売上げ」です。

では、公用文でありながら「うりあげ」が「高」や「金」といった、他の語と合せて使う場合はどうなるのか?

これは、公用文であっても「売上高」「売上金」といった使い方が正解です。

つまり、前の項目で説明した公用文以外の使い方と変わらないということ。
 
 
 
ちなみに、この裏付けについては、⽂化庁が公開している「No.21 公用文の書き方資料集」が参考になります。

以下のURLから、PDFファイル「送りがなのつけ方」「文部省 公用文送りがな用例」183-265の192ページをご確認ください。
 
 
【No.21 公用文の書き方資料集】
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/series/21/21.html

文化庁
 

③公用文に動詞で使う場合は?

公用文の場合、名詞で使う場合は「売上げ」を使います。

ただし、「動詞」の場合は「売り上げる」「売り上げよう」を使わなくてはいけません
 
 
実は、この動詞で使用する「うりあげ」の用法については、国が発信した文書には記載されていません。

つまり、国の文書に裏付けが存在しないということ。

おそらく、言葉の量が膨大過ぎて、全てを網羅することが出来なかったものと思われます。
 
 
ただし、その部分を静岡県がフォローしてくれていました。

静岡県文書管理規程の抜粋版「公用文 用字・用語・送り仮名 例集」(平成26年3月2日改訂新版)に記載されています。

公用文 用字・用語・送り仮名 例集

売り
売上げ(;名詞的用法)
売上金
売上高
売り上げる

引用元:静岡県文書管理規程:公用文 用字・用語・送り仮名 例集

ということで、名詞の場合や、他語と合わせて使う場合も含め、説明どおりですね。

「うりあげる」といった動詞の場合は「売り上げる」と表記しなくてはいけません。

これは、「うりあげよう」も同じ、「売り上げよう」です。
 

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まとめ

以上が、「売り上げ」「売上げ」「売上」の違いと使い分け方法についてでした。

内容について、簡潔にまとめましたのでご確認ください。

私⽂書における「うりあげ」

名詞→「売り上げ」(「売上げ」も許容範囲)

動詞→「売り上げる」「売り上げよう」(「売上げる」「売上げよう」も許容範囲)

他語と合わせる名詞→「売上高」「売上金」

 

公⽤⽂書における「うりあげ」

名詞→「売上げ」

動詞→「売り上げる」「売り上げよう」

他語と合わせる名詞→「売上高」「売上金」

 

「売り上げ」「売上げ」「売上」の違いを説明しましたが、「売り上げ」と似た意味の言葉で「販売」があります。

「売上金額」と「販売金額」の違いをキチンと説明できますか?

もしよかったら、下の関連記事をご覧ください。

「販売」と「売上」の違い!わかりやすく具体例で解説するよ!

 

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