「小樽」や「酒樽」といった使い方をする「樽」という漢字。
「きへん」に「尊敬」の「尊」という字で構成されています。
でも、この「樽」と「尊」を見比べると違和感が…。
そうです、よく見ると「尊」の上の2つの「チョンチョン」の形が、「樽」は「/ \」の形で「尊」は「\ /」の形です…。
なぜ違うのか?と思いきや、「樽」にも「\ /」の形もあるようです。
なぜ、「樽」に2種類の漢字があるのか?また、「樽」と「尊」との相違の理由は何なのか??
ということで、漢字の「樽」と「尊」の歴史をたどってみました!
本記事では、「樽」の漢字が2種類ある理由や、2種類の「樽」をそれぞれ表示させる方法について、わかりやすく解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
1.「樽」の漢字が2種類あるのは旧字?どっちが正しい?
「樽」の漢字が「/ \」と「\ /」の2種類存在する理由は、「旧字」だからというわけではありません。
「/ \」と「\ /」はどちらも正しい漢字であり、現在も普通に使われる漢字です。
「/ \」と「\ /」は、フォントの種類で使い分けされているのが現状。
印刷用の字体である「明朝体」「ゴシック体」などは、「/ \」の「樽」です。
そして、手書きの文字がモデルの「教科書体」「楷書体」「行書体」などは「\ /」の「樽」。
このように2種類になった理由は、「明朝体」という字体が開発されたことが影響しているといわれています。
そもそも「樽」は、印刷技術がない時代には全て手書きで「\ /」で書かれていました。
それが16世紀頃になり、中国で木版印刷用の字体として「明朝体」が誕生します。
木の板に、文字を彫りこんで印刷するのですが…。
その彫る作業の、効率化のために「/ \」の形に変わったのではないかといわれています。
つまり、彫る作業が「/ \」の方が短時間でできたということ。
この件については、大東文化大学の山口謠司准教授が、「令」という漢字に「マ」と「ア」の2種類ある理由としてテレビで説明してくれていました。
ただし、不可解なことが…。
それは、「きへん」がない「尊」という漢字は、全てのフォントが「\ /」であるということ…。
下をご覧ください。
「尊」は全て「\ /」になっていますよね。
これは、戦後のGHQ支配下で行われた「漢字を簡単にしよう」「漢字を減らそう」という政策が関係しています。
その政策で生まれたのが「当用漢字」で、使える漢字が1850字に限定されました。
そして、当用漢字に選ばれた「尊」「猶」という漢字も、「/ \」と「\ /」の2種類あったものが「\ /」だけに統一されます。
つまり、当時「/ \」の形の「尊」「猶」は消滅したのです。
ちなみに、「樽」は当用漢字に選ばれませんでした。
ですから、当時「樽」は使えない漢字であり、世間から消え去ってしまったのです。
時代は進み、現在では「当用漢字」が廃止され、漢字の使用制限が解除されました。
そのため、「樽」は昔の「/ \」と「\ /」の2種類のまま復活したのです。
これが、同じ「明朝体」や「ゴシック体」でありながら、「樽」と「尊」の漢字が異なる理由なのですね。
2.「樽」の漢字を2種類表示させる方法!
「樽」の漢字を、「/ \」と「\ /」ともにパソコンに表示させる方法は色々あります。
それでは、それぞれ解説していきますね。
①「樽」の漢字をフォント変更で2種類表示!
簡単なのは、前項で紹介した「フォント」の変更。
「明朝体」「ゴシック体」などは、「/ \」の「樽」になります。
そして、「\ /」の「樽」にしたい時は「教科書体」「楷書体」「行書体」などに変更するだけ。
簡単ですよね。
②「樽」の漢字を変換で2種類表示!
それから、「変換キー」だけで表示させる方法もあります。
パソコン設定が必要ですが、難しいものではありません。
一度設定しておけば、後は「変換キー」だけで「/ \」と「\ /」の両方の「樽」が候補に挙がり効率的です。
それでは、やり方を説明しますね。
最初は、タスクバーの日本語入力を設定する「あ」や「A」のマークの上を右クリックしてください。
右クリックによって、ずらりと下のようなメニュー表が出てきます。
そのメニューから、「プロパティ」を選択してください。
選択することで、下のような「ダイアログボックス」が表示されます。
そして、ダイアログボックス内の「詳細設定」を選択してください。
選択すると、今度は下の「ダイアログボックス」が表示されます。
上のダイアログボックスの、「変換」タブを選択してから、その中の「詳細設定」を選択してください。
すると、表示されるのは下の「ダイアログボックス」。
このダイアログボックス内の、「変換文字制限」の所に位置している「変換文字数制限をしない」にチェックマークを入れましょう。
チェックを入れたら、下の「OK」を押します。
あとは、残ったダイアログボックスを全て「OK」で閉じましょう。
これで、終了です。
普通は、「たる」で変換キーを押すと「樽」は一種類しか出ませんが、この設定が終わると「/ \」と「\ /」2種類の「樽」が候補に挙がりますよ。
③「樽」の漢字を手書きパッドで2種類表示!
それから、日本語入力を設定する「あ」や「A」のマークを右クリックすることで、「IMEパッド-手書き」を使い漢字を探すことができます。
この機能を使って、「/ \」と「\ /」2種類の「樽」を表示させることが可能ですよ。
マウスによる手書きで「樽」を書くと、右側に多くの候補が出てきます。
その中には「/ \」の「樽」が現われますが、その「樽」を右クリックしてから「異体字の挿入」を左クリックしてみてください。
そうすることで、「\ /」の「樽」が表示されます。
ただし、この方法はマウスで手書きしなくてはいけませんので、かなり面倒…。
実用的ではありませんが、あくまでも一つの方法ということで受け取ってください。
まとめ
以上が、「樽」の漢字が2種類ある理由と、2種類の「樽」をそれぞれ表示させる方法についてでした。
「樽」の漢字が2種類ある理由は、明朝体の誕生が影響しているといわれています。
つまり、木版印刷の「彫師」の都合ということ。
「樽」と「尊」の漢字が異なる理由は、戦後のGHQの政策が影響しています。
こういった当用漢字が影響している漢字は、他にもたくさんありますよ。
「母」「苺」は「点々」ですが、「海」「毎」は「点々」ではなく「直線」になっていますよね。
これもその政策によって、「海」「毎」が直線にされました。
「/ \」と「\ /」の「樽」を、双方ともパソコンに表示させるには、フォント変更が簡単です。
ただし、頻繁に使う方であれば、いちいちフォント変更するよりは「変換キー」の方が楽ですよね。
そういった方は、「変換文字数制限をしない」に設定変更してください。