「領」という漢字があります。
支配するという意味がある漢字で、「占領」「領空」「領土」といった使い方でおなじみの字。
この「領」という漢字は、ある問題点があります。
それは、左側の「令」という字の下の部分を「マ」とするべきか、「ア」とするべきかといった問題。
上が「マ」の「領」、そして下が「ア」の「領」です。
どっちが正しい…？違いは…？
間違ったまま使い続けるのは、避けたいところ！
ということで、公的機関としての判断を徹底的に調査してみました。
本記事では、「領」の漢字は「マ」なのか「ア」なのか？正しい「領」について根拠も含めわかりやすく解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください！
1.「領」の漢字の違い！「マ・ア」どっちが正しい？
まずは、どっちが正しいのかを簡潔にお伝えします。
「領」の漢字は、「マ」も正しいですし、「ア」も正しい漢字。
要するに、どっち正しいということ。
この根拠は、公的機関である文化庁発の「常用漢字表の字体・字形に関する指針（報告）について」という文書の中に、どちらも正しい書き方である旨が記載されています。
文書の内容については、次の項目で原文を紹介しますね。
実は、「マ」の「領」と「ア」の「領」なのですが、パソコンのフォントでも両方の種類があります。
たとえば、「マ」の「領」が多いのが、手書きの字が元になっている「教科書体」や「楷書体」など。
そして、「ア」の「領」が多いのが、印刷用の字体である「明朝体」や「ゴシック体」などです。
このように、広く世間で使われるフォントも「マ」「ア」両方ありますので、手書きの際も気にする必要はないということ。
それでは、どうして「マ」の「領」と「ア」の「領」、2種類の形が存在するのか？？
この理由は、過去のテレビ番組で大東文化大学の山口謠司氏が説明してくれました。
16世紀ころに、中国で木版印刷が行われるようになります。
その時に、「明朝体」という字体が誕生しました。
そして、木板に明朝体を手彫りするのですが、鋭角に彫らなくてはいけない「マ」よりも、直線的に彫る「ア」の方が短時間で作業が完了したそうです。
ということで、元々「マ」と手書きされていたものが、印刷の字体に限って「ア」が使われるようになりました。
印刷用の明朝体やゴシック体に「ア」が使われるのは、こういった理由があったからなのですね。
2.「領」の漢字に対する公的機関としての判断！
続いて、「マ」の「領」と「ア」の「領」に関する、公的機関の見解を原文のまま紹介します。
それは、「常用漢字表の字体・字形に関する指針（報告）について」という文書で、文化庁が出したもの。
平成28年（2016年）2月29日付けの文書です。
４ 手書き（筆写）の楷書では、いろいろな書き方があるもの
手書きの楷書においては、以下に挙げるような漢字の構成要素及び漢字の例のように、字形に違いがあっても、同じ字体として認めることのできるものがある。
それらを（１）～（６）に分類して示した。
（６）その他そのほか、漢字の点画について、いろいろな書き表し方があるものとして、以下のような例が挙げられる。
ここに挙げるような違いは、字体の判別の上で問題にならない。
エ その他
◇ 上記を含め、同様に考えることができる漢字の例
引用元：常用漢字表の字体・字形に関する指針（報告）について
ということで、「マ」の「令」と「ア」の「令」は同じ字として認めると記載されています。
さらに、「領」という漢字も「令」と同様の扱いとなっているとおり、「マ」の「領」と「ア」の「領」はどっちも正しいということ。
それから、Q＆Aもありましたので、こちらも紹介します。
Ｑ42
「令」や「鈴」を手書きの楷書でどう書くか
ある金融機関の窓口で書類に記入する際に「令」を小学校で習った形（「マの令」）で書いたら、明朝体と同じ形に書き直すように言われました。
そうする必要があったのでしょうか。
また、「鈴」、「冷」、「齢」といったほかの常用漢字や「伶」、「怜」、「玲」などの表外漢字の場合も同じように考えていいのでしょうか。
Ａ本来であれば、書き直す必要のないものです。
印刷文字に見慣れてしまったため、手書きでは「マの令」と書く習慣があることが理解されにくくなっているのでしょう。
「字体についての解説」にもこの書き方が例示されています。これは、手書き文字の字形と印刷文字の字形のそれぞれの習慣に基づく字形の相違であり、別の字ではありません。
手書きの楷書によく見られる「マの令」と明朝体の「令」との間には字形の差があるものの、同じ字体であるとみなされてきました。
なお、「アの令」のように手書きしてもかまいません。
また、質問のとおり、小学校ではこの漢字を「令」の字形で学習しています。その字形が社会で通用しない場合があるというのは、情報機器の普及等によって印刷された文字を見る機会の方が多くなっているからであろうと考えられます。
本来、印刷文字の形のとおりに手書きする必要はなく、このことは、社会全体で共有される必要があります。
「令」に限らず、この形が漢字の一部になっているほかの常用漢字「鈴」、「冷」、「齢」などでも同様ですし、「伶」、「怜」、「玲」などの表外漢字についても同じように考えることができるでしょう。
引用元：常用漢字表の字体・字形に関する指針（報告）について
Q＆Aにも、別の字ではないということがハッキリ書かれています。
どっちも正しい漢字なので、気にする必要はないということですね。
まとめ
以上が、正しい「領」の漢字についてでした。
「領」の漢字は、「マ」も正しいですし、「ア」も正しい漢字。
要するに、どっち正しいということ。
「領」を手書きする時は、細かいことは気にせずに堂々と書いてください。