「払う」と「支払う」。
「お金を払う」とか、「お金を支払う」といった使い方をしますが…。
これ、どう見ても同じ意味でしょ…。
と、思っていたのですよ…。
しかし、ちまたの噂では、お金の受け渡しに関する意識に違いがあるとか…。
ということで、この2つの言葉の意味を徹底的に分析してみましたよ!
実は、「払う」と「支払う」では微妙な違いがありました!
本記事では、「払う」と「支払う」の意味の違いと使い分けについて、具体例でわかりやすく解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
1.「払う」と「支払う」の意味の違い!
最初に、「払う」と「支払う」の意味の違いを簡潔にお伝えします。
「支払う」とは、代金や債務としてのお金を相手に渡すことで、強制的な要素が強い言葉。
また「払う」には、お金を渡す以外に「取り除く」「費やす」など、他にも多くの意味があります。
一言で表現すると、こういった違いです。
それでは、さらに詳細に紐解いていきますね。
①お金を「払う」と「支払う」の違いを詳しく!
「払う」はお金を相手に渡すことですが、「支払う」は代金や債務としてのお金を相手に渡すこと。
基本的には「お金を相手に渡すこと」であり、同じ意味なのですが「支払う」の方が義務的な要素が強くなります。
たとえば、Aさんが車を購入した場合、当然ですがお金を車屋さんに渡しますよね。
このAさんは「車がほしい!」と思って買ったものなので、外部からの「お金を渡せよ!!」といった外圧なくお金を渡しますが、これが「払う」です。
つまり、ただ単に「お金を相手に渡すこと」で、「払う」。
ですが、仮に車を購入した後に急遽入院することになり車屋さんに渡すお金が無くなってしまったとしましょう。
その場合は、車屋さんは「お金をキチンと渡してもらわないと困ります!」と督促してきます。
そしてAさんは、いろいろと工夫してお金を工面し、無事お金を渡したことで事なきを得ました。
この場合は、強制的な要素が加わりますので「支払う」です。
わかりやすくするために例文にしましたが、必ずこのように使わなくてはいけないということではありません。
強制力がなくても「支払う」を使うことができますし、逆に強制的であっても「払う」でもよいのです。
あくまでも「払う」と「支払う」の持つ、本来の意味を表現するために例文にしました。
ちなみに、この「支払う」の「支」は、昔は「し」と漢字ではありませんでした。
この「し」は、動詞の「す」の連用形。
動詞の「す」といっても「?」となると思いますが、要は「する」のことです。
たとえば、「○○すべきだ!」の「す」といえばわかりやすいでしょうか。
この「すべき」は、「するべき」ともいいますよね。
つまり、「払うことをする」ということで「し払う」、やがてこの「し」が漢字となり「支」が使われるようになりました。
役所では、「支」ではなく「仕」を使っていたこともあるようです。
実は、この「支」も「仕」も当て字です。
②「払う」の他の意味とは!
「払う」には、「お金を渡す」以外に、「取り除く」「立ち退く」「心を向ける」「費やす」といった大きく4種類の意味があります。
「取り除く」という意味では、「ほこりを払う」「木の枝を払う」「悪魔を払う」「ハエを払う」「古新聞を払う」といった使い方をする「払う」。
あとは、正確には取り除いてはいませんが柔道の「足を払う」といった使い方もします。
「立ち退く」という意味では、「アパートをひき払う」「宿をひき払う」といった使い方をする「払う」ですね。
「心を向ける」は、「相手に敬意を払う」「注意を払う」といった使い方をします。
最後の「費やす」は、「犠牲を払う」の「払う」。
この「犠牲を払う」は、何となく意味合いが「お金を払う」に似ています。
③「払う」と「支払う」の違いを整理!
それでは、ここで一度「払う」と「支払う」の違いを整理します。
お金を相手に渡すことが「払う」。
強制力なくお金を渡す意味が強くなります。
そして、代金や債務としてのお金を相手に渡すことが「支払う」。
強制力のもとで、お金を渡す意味合いが強くなります。
それから「払う」には、「取り除く」「立ち退く」「心を向ける」「費やす」という意味があります。
2.「払う」と「支払う」の辞書での意味!
続いて、辞書による「払う」と「支払う」の意味がどうなっているのか確認していきます。
①「払う」の辞書での意味!
【払う】
①その場所から取り除く。除き去る。「木の下枝を―」
②ごみなどを除いてきれいにする。「ほこりを―」
③しりぞける。追いやる。「悪魔を―」「人を―」「威風あたりを―(=威圧する)」
④よこざまに打ったり切ったりする。「相手の足を―」
⑤金銭を支払う。「代金を―」
⑥不要物を売り渡す。「古新聞を―」
⑦立ちのく。引きはらう。「宿を―」
⑧意識を向ける。「注意を―」「敬意を―」
⑨費やす。「犠牲を―」
引用元:旺文社国語辞典
意味⑤がお金に関する「払う」の意味ですが、この説明だと「支払う」との違いがよくわかりません…。
それから、「取り除く」「立ち退く」「心を向ける」「費やす」と「お金」で5つの意味にまとめて説明しましたが、この辞書では意味が9種類となっています。
②「支払う」の辞書での意味!
【支払う】
・金銭を払う。「旅行代金を―」
引用元:旺文社国語辞典
こちらも、「強制的」「義務的」といった説明がありません。
ですが、他の辞書で「支払う」ではなく「支払い」で調べると、以下のような記載内容となっています。
【支払い】
1 品物やサービスなどに対して、金銭を払い渡すこと。「カードで支払いをする」「支払いを済ませる」
2 金銭債務の履行として金銭を渡すこと。
[補説]国庫からの支払いにはもと「仕払い」の字を用いた。
引用元:デジタル大辞泉
こうなると、本記事の説明どおりです。
3.「払う」と「支払う」の使い方!
次に、「払う」と「支払う」の使い方を例文で紹介します。
①「払う」の使い方!
・情報を得るためにお金を払うという意識が低いと言われているが、本当なのか?
・運のいい人は「邪気を払うこと」をやっているって…??
・リモートワークが普及しオフィスを引き払う企業が相次いでいる。
・日米の当局者は同盟の管理に注意を払う必要がある。
②「支払う」の使い方!
・提供者へ「適切な使用料」を支払うことを盛り込む改正著作権法が成立した。
・取引価格低下や販売の伸び悩みから、従業員に賃金を支払うのが困難な状況だ。
・商品購入代金を後からまとめて支払うことができるサービスがある。
・同社は、対価を支払うことに合意していたことが明らかになった。
4.「払う」や「支払う」には似た意味の言葉がたくさんある!
「払う」や「支払う」には似た意味の言葉がたくさんありますよ。
下の関連記事も、覗いてみてください。
ぜひ、参考にしてみてくださいね。
まとめ
以上が、「払う」と「支払う」の意味の違いと使い分けについてでした。
「払う」は、お金を相手に渡すこと。
「支払う」は、代金や債務としてのお金を相手に渡すこと。
「支払う」は、「払う」に比べて義務的要素が強くなります。
また「払う」には、その他に「取り除く」「立ち退く」「心を向ける」「費やす」という意味があります。