挨拶の機会はときどき訪れますが、その時に頭を悩ますのが言葉の使い方…。
たとえば、「ご挨拶申し上げます」といった使い方。
これが、「○○様、ご挨拶ありがとうございました」だと、相手に対する尊敬語で問題ないと思うのですが…。
自分自身が発言するのに、「ご挨拶」は…ちょっと変なような…。
でも実際に、公式の場面で、自分自身で「ご挨拶」と言っているシーンは結構多いです。
これは、「ご挨拶」と「挨拶」の使い分け方法を徹底的に調査する必要がありますね!
ということで、本記事では「ご挨拶」と「挨拶」の違いと使い分け方法について、わかりやすく解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
1.「ご挨拶」と「挨拶」の違いと使い分け方法とは?
最初に、自分で発言する「挨拶」という言葉の正しい使い方を端的にお伝えします。
問題ありませんよ。
それでは、さらにわかりやすく紐解いていきますね。
①「ご挨拶」は尊敬語ではなく謙譲語である!
「ご挨拶申し上げます」が正しい理由は、「ご挨拶」が尊敬語ではなく謙譲語だからです。
もっとわかりやすく表現するならば、「あなたに対する挨拶」ということで、謙譲語にすると「(あなたに対する)ご挨拶」ということなのですね。
なので「私からご挨拶を…」といった使い方や、「当社の社長からご挨拶を…」という使い方も、「ご挨拶」は謙譲語ですので問題ありませんよ。
ややこしいのは、尊敬語も「ご挨拶」だし謙譲語も「ご挨拶」で、どっちも同じだから。
たとえば、「見る」の尊敬語は「ご覧になる」で、謙譲語は「拝見する」です。
尊敬語と謙譲語が違うのでわかりやすいですね。
ですから、相手に対して発言する時は「○○様が最初にご覧になります」となりますし、自分の行為を発言する時は「自分が最初に拝見します」となるわけです。
②文化庁発「お」や「ご」などの敬語の使い方!
「お」や「ご」などの敬語の使い方について、文化庁が発信しています。
文化庁による「これからの敬語」では以下のようになっています。
4「お」「ご」の整理
(1)つけてよい場合
4)自分の物事ではあるが、相手の人に対する物事である関係上、それをつけることに慣用が固定している場合。たとえば、
お手紙(お返事・ご返事)をさしあげましたが
お願い・お礼・ご遠慮
ご報告いたします
引用元:文化庁 第1期国語審議会 これからの敬語
特に、「4)自分の物事ではあるが、相手の人に対する物事である」この部分です。
つまり、前の項目で説明した「(あなたに対する)ご挨拶」ということですね。
③「ご挨拶」は自分の発言意外に自分が発信する文書も同じ!
「ご挨拶」の使い方は、文書などでも同様です。
よく見るのが、会合などの式次第ですね。
式次第やタイムスケジュールなどで、自社側の人間が挨拶する場合は「○○社長挨拶」や「○○部長挨拶」といった表記が多くあります。
これも、謙譲語にすべきですので「ご挨拶」が正しい使い方なのですね。
④「ご挨拶」と「挨拶」の使い方を整理!
ということで、一旦「ご挨拶」と「挨拶」の使い方を整理しますね。
「ご挨拶」と自分が発言する場合であっても、これは「あなたに対する挨拶」=「ご挨拶」ということで謙譲語ですので間違った使い方ではありません。
これは、文書などでの発信も同様。
逆に、「挨拶」と発言してしまうと少し乱暴な表現になってしまいます。
たとえば、「いただきます」と相手に伝えるべきところを、「食べます」と言っていることと同じですね。
気をつけましょう。
2.敬語の「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」を確認!
「尊敬語」と「謙譲語」について説明しましたので、一応「丁寧語」も含めた敬語について確認していきますね。
①「尊敬語」の意味!
【尊敬語】
・敬語の一つ。相手や目上の人の動作・状態・所有物などを敬って言う言葉。動詞では、その主語に対する敬意が表される。「召し上がる」「いらっしゃる」など。
引用元:旺文社国語辞典
これは、相手の人の行動や物などを表す時の敬った言葉ですね。
ですから、相手の人が行う「挨拶」は「ご挨拶」になるわけです。
尊敬語は、基本的に自分の行為には使いません。
②「謙譲語」の意味!
【謙譲語】
・敬語の一つ。相手や目上の人に関係する自分・自分がわの者の動作をへりくだって言う言葉。動詞の目的語など、動作の及ぶ対象に対する敬意が表される。「申し上げる」「差し上げる」「拝見する」など。
引用元:旺文社国語辞典
そして「謙譲語」は、相手の人を敬うために、自分の立場を低くした言葉。
「挨拶」の場合は「相手に対する挨拶」ということで、「ご挨拶」になるわけですね。
謙譲語は、基本的に相手の行為には使いません。
③「丁寧語」の意味!
【丁寧語】
・敬語の一つ。話し手・書き手が聞き手・読み手に対して敬意を表すために、表現のしかたを丁寧にする言葉。「そうです」「話します」「お暑くなって参りました」の「です」「ます」「お」「参ります」など。
引用元:旺文社国語辞典
これは、表現方法を丁寧にした言葉です。
「です」「ます」などですね。
それから「食事」を「お食事」というのも丁寧語。
丁寧語は、相手の行為でも自分の行為でも使います。
3.「ご挨拶」のほかに日常的に使う言葉で間違いやすいもの!
最後は、業務上など敬語を多用しなくてはいけない場面で間違いやすい言葉をご紹介します。
自分が相手に対する行為は以下のようになります。
×「連絡いたします」→○「ご連絡いたします」
×「突然の連絡、大変失礼いたします」→○「突然のご連絡、大変失礼いたします」
×「電話いたします」→○「お電話いたします」
×「返信いたします」→○「ご返信いたします」
×「報告させていただきます」→○「ご報告させていただきます」
×「提案させていただきます」→○「ご提案させていただきます」
ちなみに、「質問」や「依頼」についても同様に自分が相手に対する行為です。
ですが、「質問」「依頼」は相手の行為を要求する意味があります。
つまり、自分の行為で完結しないわけですね。
こういった、「質問」や「依頼」などのように「答えてください」「やってください」といった相手に行為を要求する言葉については「お」「ご」はつけません。
気をつけてくださいね。
まとめ
以上が、「ご挨拶」と「挨拶」の違いと使い分け方法についてでした。
言葉に「お」「ご」をつけるかどうかのポイントは、「相手に対する行為」かどうか。
「相手に対する行為」であれば、自分の行為であっても「お」「ご」をつけます。
この場合、「お」「ご」を付けたとしても尊敬語ではなく謙譲語ですよ。
ただし、「質問」や「依頼」は相手に返答や行為を要求する言葉なので「お」「ご」をつけません。
気をつけてくださいね。