「誹謗」と「中傷」。
「誹謗中傷によって彼は会社を辞めた」
といった使い方をするとおり、「誹謗」と「中傷」はセットで使われる言葉。
ですから、「誹謗」と「中傷」の言葉の違いなど、意識したこともなかったのですが…。
この「誹謗」と「中傷」、実は意味が違うらしい…。
ということで、この2つの言葉の意味を徹底的に分析してみましたよ!
本記事では、「誹謗」と「中傷」の意味の違いと使い分けについて、わかりやすく解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
1.「誹謗」と「中傷」の意味の違い!
最初に、「誹謗」と「中傷」の意味の違いを簡潔にお伝えします。
「中傷」とは、事実ではない悪口を言って、相手の名誉を傷つけること。
短く表現すると、こういった違いです。
それでは、さらにわかりやすく紐解いていきますね。
①悪口の発言者にスポットが当たる「誹謗」!
「誹謗」は、悪口を言うこと。
そして、事実に基づいている悪口でも、事実無根の悪口でも全て「誹謗」です。
ですから、事実であっても悪口であれば「誹謗」ですよ。
たとえば、「あの人は、太り過ぎだ!」と発言しました。
発言された相手は、体重が150キロ以上の巨漢でそれが売りの格闘家だったとします。
格闘家は、意図的に体重を増やしたわけで、「太り過ぎ」と言われても何とも思いませんでした。
しかし、相手は何も気にしていなくても、悪く言う「悪口」ですので「誹謗」です。
それから、「誹謗」はあくまでも発言者の行為であって、相手が存在しなくても成り立ちます。
たとえば、今は生存していない歴史上の人物に対して悪口を言えば「誹謗」ということ。
悪口を言われて、嫌な思いをする人がいなくても「誹謗」なのですね。
②悪口を言われた人にスポットが当たる「中傷」!
「中傷」は、事実ではない悪口を言って、相手の名誉を傷つけること。
ポイントは、「事実ではない悪口」と「相手の名誉を傷つける」の2つ。
事実に基づく悪口の場合は、「誹謗」ではありますが、「中傷」ではありません。
たとえば、「お前の間抜けなミスのせいで大損害だ!最悪だ!いい加減にしろ!」といった場合、事実であれば「中傷」ではありません。
悪口かどうかは、かなり微妙な部分はありますが…。
ただし、これが事実無根だった場合、そして発言者が事実無根を把握していた場合は「中傷」になります。
それから、「中傷」は必ず名誉を傷つけられる相手が存在します。
事実ではない悪口によって、「名誉が傷つけられる」人が存在して初めて「中傷」が成立するのですね。
これは、言葉に「傷」という漢字が使われているとおり。
ですから、既に生存していない歴史上の人物の悪口を言っても「中傷」ではありません。
ただし、その悪口によって、その歴史上の人物の子孫が名誉を傷つけられる可能性があります!
軽はずみな「悪口」は、つつしみましょう…。
③「誹謗」と「中傷」の意味の違いを整理!
それでは、ここで一度「誹謗」と「中傷」の意味の違いを整理します。
悪口を言うことが「誹謗」。
その悪口が、事実であっても事実無根であっても「誹謗」です。
事実ではない悪口を言って、相手の名誉を傷つけることが「中傷」。
事実無根の悪口が対象であり、必ず名誉を傷つけられる相手が存在します。
2.「誹謗」と「中傷」の辞書での意味!
続いて、辞書による「誹謗」と「中傷」の意味がどうなっているのか確認していきます。
①「誹謗」の辞書での意味!
【誹謗】
・そしりののしること。事実無根の悪口を言うこと。「―中傷」「仲間を―する」
引用元:旺文社国語辞典
「そしる」「ののしる」、どちらも悪口を言うこと。
悪口を言うこと、また事実無根の悪口を言うことですね。
②「中傷」の辞書での意味!
【中傷】
・故意に根拠のない悪口を言って、他人の名誉を傷つけること。「誹謗―」
引用元:旺文社国語辞典
これは、前の項目で説明したとおりの内容ですね。
「根拠のない悪口」と「傷つける」という部分がポイントです。
3.「誹謗」と「中傷」の使い方!
最後に、「誹謗」と「中傷」の使い方を例文で紹介します。
①「誹謗」の使い方!
・彼の芸術作品を誹謗して何の意味がある?
・誹謗正法とは仏の教えに対して悪口をいうこと。
・この言葉の使い方は少し誹謗的だ。
・戦略的に誹謗を展開しライバルを蹴落とす。
②「中傷」の使い方!
・この記事は完全に中傷であり、名誉棄損で訴える。
・今の中傷は侮辱罪になる可能性がある。
・完全に事実の裏付けがない中傷。
・あの記者の質問は中傷する意図が見える。
まとめ
以上が、「誹謗」と「中傷」の意味の違いと使い分けについてでした。
「誹謗」は、悪口を言うこと。
その悪口が、事実であろうがなかろうが関係ありません。
悪口は全部「誹謗」ということ。
「中傷」は、事実ではない悪口を言って、相手の名誉を傷つけること。
「事実ではない悪口」「相手の名誉を傷つける」、この2点がポイントですね。