「波瀾万丈」というと、上がったり下がったりの起伏の激しい人生などのたとえに使う四字熟語。
激動の人生経験をした人に対し、「まさに、あなたの人生は波瀾万丈だ!」といった使い方をします。
でも、パソコンで変換すると「波瀾万丈」と「波乱万丈」の2種類が現れます…。
あれ…??
これはどういうことか??ということで!
「波瀾万丈」と「波乱万丈」の違いを正確に調べてみました!
本記事では、「波瀾万丈」と「波乱万丈」の違いについて、徹底的に調査した結果をわかりやすく解説していきます。
深掘りしましたので、ご期待ください!!
1.「波乱万丈」と「波瀾万丈」に違いは?
最初に、「波乱万丈」と「波瀾万丈」に違いがあるのかどうか、簡潔にお伝えします。
どちらも、人生などの変化が激しいことを意味しています。
本来は「波瀾万丈」だったのですが、「瀾」が当用漢字から除外されたため代用として「乱」が使われるようになったものです。
その後、当用漢字が廃止され常用漢字が制定されましたが、「瀾」は常用漢字からも除外されています。
それでは、さらにわかりやすく紐解いていきます。
①「当用漢字」とは?「波瀾万丈」が除外された理由は?
「当用漢字」ができたのは、昭和21年(1946年)のこと。
敗戦後のアメリカ統治下でつくられました。
これは、「日本が民主化されないのは、国民が難しい字を理解できていないからだ」といった間違った認識から生まれたもの。
だって、日本は昔から民主主義でしたし、識字率も非常に高かったのですから…。
アメリカは、漢字を廃止して最終的にはローマ字表記にすることを目指していたのです。
しかし、即時に漢字を廃止してしまうことで混乱が予想されることから、当面の間に限り使用してもよい漢字ということで「当用漢字」がつくられたのですね。
漢字の数も少なく、難しい漢字は排除されました。
その中に「波瀾万丈」の「瀾」が含まれなかったということです。
「瀾」が使えないことから、応急処置的な対応として「乱」を代替えとして使ったのですね。
ちなみに、当時は「当用漢字」以外は使ってはいけないことになっていました。
かなり厳しいものだったのですね。
②その後「当用漢字」から「常用漢字」へ!
その後、「常用漢字」がつくられたのが、昭和56年(1981年)。
「当用漢字」の後継的な位置づけで「常用漢字」が生まれたのです。
しかも、「当面の間使ってもよい漢字」の「当用漢字」から、「漢字を使う時の目安」の「常用漢字」となり意味合いも違ってきます。
「絶対これしか使っちゃダメ」の「当用漢字」から、「あくまでも目安であり、別に他の漢字を使っても大丈夫」という「常用漢字」に変わったということですね。
しかし、残念ながら「波瀾万丈」の「瀾」は「常用漢字」に追加されることはなかったのです。
③本来の「波瀾万丈」に統一されない理由は?
現在は「常用漢字」はあるものの、常用漢字表以外の漢字を使用しても問題ありません。
ただし、「公用文」や「法律」などは「常用漢字」以外は使えないことになっています。
これは、なるべく全国民に広く理解してもらうことを目的としているから。
そして、絶対的な決まりはないものの、報道機関などでは「公用文」や「法律」にならい基本的に「常用漢字」を使用しているのが実態です。
本来の「波瀾万丈」ではなく、「波乱万丈」を多く目にするのはそういった理由があるのですね。
2.「波瀾万丈」の辞書での意味!「乱」と「瀾」の意味も!
一応ですが、「波瀾万丈」や「乱」や「瀾」などの意味が辞書ではどうなっているのか、みていきましょう。
【波瀾万丈】
・事件や人の生涯などの変化が激しいこと。「―の人生」
引用元:旺文社国語辞典
【波乱/波瀾】
①さわぎ。もめごと。「―が起きる」
②変化。曲折のあること。「―に富んだ一生」
引用元:旺文社国語辞典
【万丈】
①きわめて高いこと。「―の山」「波瀾―」
②意気盛んなこと。「気炎―」
引用元:旺文社国語辞典
【瀾】
・大波。
引用元:旺文社国語辞典
【乱】
①みだれる。みだす。みだれ。
②みだりに。むやみに。
引用元:旺文社国語辞典
こうしてみると、本来の「波瀾万丈」は、波(波)や大波(瀾)がきわめて高い(万丈)ということを人生などにたとえた言葉ですね。
まあ、波は激しくうねるので、大波の意味がある「瀾」を乱れるの「乱」に置き換えても意味が大きく変わることはないという判断だったのかもしれません。
まとめ
以上が、「波乱万丈」と「波瀾万丈」の違いについてでした。
「波乱万丈」と「波瀾万丈」は意味が同じ、どちらを使っても間違いではありません。
本来は「波瀾万丈」の方が先にあったということです。
漢字の使用制限があり、「瀾」という字が使えなくなったのが終戦後間もなく。
その使えない「瀾」の代替えとして使われたのが「乱」なのです。
現在は、使用の制限はありませんが「常用漢字」にはなっていません。
したがって、公文書や報道などでは「乱」の方、「波乱万丈」が多く使われます。