「遠い」「遠方」という使い方をする「遠」という漢字。
この「遠」の「袁」の部分が、問題になっているらしい…。
それは、一番下の部分を「とめる」のか、「はねる」と間違いなのか?といったもの。
私自身は、これまで気にしたことはないのですが、普段はとめているような気がします…。
上がよく目にする「とめる」タイプで、下が「はねる」タイプ。
とめる方は間違いないと思われますが、はねると誤字なの?
やはり、正しい書き方をはっきりさせなくてはいけません!
ということで、国の機関である文化庁の見解をしっかり調べてみました。
本記事では、「遠」の漢字は「はねる」「とめる」?正しい「遠」について根拠も含めわかりやすく解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
1.「遠」の漢字は「はねる・とめる」正しいのはどっち?
最初に、「遠」の漢字の正解をお伝えします。
「遠」は、「はねる」でも正しいですし、「とめる」でも正しい漢字。
つまり、どっちも正しい漢字ということ。
この根拠は、国の機関である文化庁が文書で示しています。
それは、「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」という文書なのですが、この内容は次の項目で詳しく紹介しますね。
また、パソコンなどのフォントにも「はねる」タイプの「遠」があり、普通に使われています。
たとえば、手書き文字がモデルの「HG行書体」などは「はねる」タイプ。
このように、日本全国で使われているフォントでもはねています。
これも、はねる「遠」が間違いではない一つの根拠といっても良いでしょう。
それから、下の「遠」は印刷物やWEBなどに使われる「とめる」タイプ。
余談ですが、「遠」のMS明朝体は「とめる」ですが、同じ「袁」を使った漢字の「猿」のMS明朝体は下のとおり「はねる」です。
同じ「袁」を使った漢字で、しかも同じ「MS明朝体」でありながら書き方が違うのは、ちょっと不思議ですよね…。
これには理由があります。
「遠」はとめる書き方が広く普及していて、「猿」ははねる書き方が多く使われているから。
では、なぜ「遠」はとめる、「猿」ははねる、ともに異なる書き方が広がったのか、ですがこれには戦後日本を支配したGHQが関係しています。
GHQは、日本語をよりわかりやすくする目的で、漢字を簡単にししかも種類を減らす政策として当用漢字を制定しました。
その当用漢字として、使用できる漢字に選ばれたのが「園」「遠」など。
しかもこの時に、元々決まりがなかった「袁」の下を、「とめる」書き方に統一します。
「猿」の方は、当用漢字に選ばれませんでしたので、当時は使用できない漢字になりました。
その後、1981年に制限目的の当用漢字は廃止、使用の目安となる常用漢字が制定されました。
常用漢字には、「園」「遠」「猿」全てが指定されます。
そのため、書き方の制約を受けた「園」「遠」は当用漢字時代の「とめる」書き方が普通に、そして書き方の制約を受けていない「猿」は昔のとおり「はねる」書き方が多くなったということ。
ですが、「猿」も現在は、「はねる」「とめる」どちらも間違いではありませんよ。
2.「遠」の漢字に対する文化庁の見解!
次に、文化庁が出した「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」の内容を紹介します。
この文書は、平成28年(2016年)2月29日付けで出されたもの。
4 手書き(筆写)の楷書では、いろいろな書き方があるもの
手書きの楷書においては、以下に挙げるような漢字の構成要素及び漢字の例のように、字形に違いがあっても、同じ字体として認めることのできるものがある。
それらを(1)~(6)に分類して示した。
(5)はねるか、とめるかに関する例漢字の点画の終筆をはねるか、とめるかについて、いろいろな書き表し方があるものとして、以下のような例が挙げられる。
ここに挙げるような点画のはね方、とめ方の違いは、字体の判別の上で問題にならない。
ア 縦画の終筆をはねて書くことも、とめて書くこともあるもの
◇ 上記を含め、同様に考えることができる漢字の例
引用元:常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について
このとおり、どちらでも良いといった内容が記載されています。
ちなみに、「遠」は最上段の画像にもありますし、最後の画像の中段くらいにも載っていますね。
あと、一応Q&Aも載っていましたので紹介します。
Q47
とめるか、はねるか、はらうか(「園」、「猿」など)
「園」や「遠」という漢字の「袁」と、「猿」という漢字の「袁」では、下の部分の表し方が違っていることがありますが、これは使い分ける必要があるのでしょうか。
A狭いところではとめ、余裕のある場合にははねる傾向がありますが、どちらの書き方をしても誤りではありません。
「園」、「遠」、「猿」ともに、下部の縦画については、とめて書いても、はねて書いてもその文字の字体としては誤りではなく、正誤の判断を左右しません。また、「袁」の最終画についても、とめて書いても、はらって書いても誤りではありません。
慣用として、「園」や「遠」のように、上下を他の点画で囲まれるなど、狭いところに「袁」の形がある場合には、下部の縦画をとめている場合が多く、「猿」のように、比較的広いところにある場合には、はねたりはらったりしているという傾向があります。しかし、いずれの書き方をしてあっても正誤の判断には関係しません。
これは、「環」、「還」などでも同様です。
引用元:常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について
こちらには、「猿」についても、どちらでも良い旨が書かれています。
「遠」「猿」ともに、どのように書いても良いということ。
まとめ
以上が、正しい「遠」の書き方についてでした。
「遠」は、「はねる」でも正しいですし、「とめる」でも正しい漢字。
つまり、どっちも正しい漢字ということ。
これは、「猿」も同様。
気にする必要はないということです。