「全て」と「全部」。
並べてみると、全く同じ意味にみえます…。
たとえば…。
「仕事が全て終わった」
「仕事が全部終わった」
といったように、どちらも同じ意味ですよね…。
ですが、よくよく調べてみたら…なんと!「全部」独自の意味がありました!
つまり、「全て」と「全部」が完全に一致した意味ではないということ!
ということで、本記事では「全て」と「全部」の意味の違いと使い分けについて、具体例でわかりやすく解説していきます。
かなり深掘りしましたので、ご期待ください!
1.「全て」と「全部」の意味の違い!
最初に、「全て」と「全部」の意味の違いを簡潔にお伝えします。
名詞の「全て」とは、いっさい、みんなという意味。
副詞の「全て」とは、何もかも、残らずという意味。
「全部」にも2つの意味があります。
ある物事のみんなという意味と、一揃いになっている書物の全冊のこと。
少しわかりにくいかもしれませんが、一言で表現するとこういった違いです。
それでは、さらにわかりやすく紐解いていきますね。
①「全て」の意味とは!
「全て」という言葉には、「名詞」としての意味と「副詞」としての意味があります。
「名詞」と「副詞」の違いは「主語」になるかならないか。
「名詞」は主語になる言葉で、たとえば「冷蔵庫」「野球」「空」「教科書」といった言葉が該当します。
「冷蔵庫は、大きい」、という文章の主語は「冷蔵庫」ですよね。
「副詞」は主語にはならず、別の言葉を詳しく飾る役割をにないます。
たとえば、「もっと急いでくれ!」といった場合、「もっと」が副詞で「急いで」という言葉を詳しく飾っています。
ということで、名詞の「全て」は、「いっさい」「みんな」という意味。
この意味は、「全部」の一つ目の意味と同じです。
たとえば、「全ては、トーナメントを勝ち抜くため」といった使い方をします。
この文章の主語は「全て」。
この場合の「全て」とは、努力や研究など勝つためにこれまで犠牲にしてきた物事が当てはまると思うのですが、ハッキリ言っていませんのであくまで想像。
そして、「全ては、トーナメントを勝ち抜くため」を、「全て」の意味である「いっさい」や「みんな」に置き換えることができます。
もう一つの副詞の「全て」は、「何もかも」「残らず」という意味。
副詞の「全て」は、主語ではなく別の言葉を詳しく飾る意味で使います。
「犯行を全て白状しろ!」といった使い方。
この場合は主語が「犯行」で、この「全て」は「白状しろ」を詳しくしています。
ですから、仮に「全て」を無くしても文章は成立しますよ。
「犯行を白状しろ」で、おかしくないですよね。
②「全部」の意味とは!
「全部」は「名詞」であり、しかも意味が2つ。
「ある物事のみんな」という意味と、「一揃いになっている書物の全冊」のこと。
最初の「ある物事のみんな」は、前の項目の「全て」と同じ意味です。
ですから、前の項目の例文「全ては、トーナメントを勝ち抜くため」を「全部、トーナメントを勝ち抜くため」に置き換えることができます。
もちろん、主語にもなり得るということ。
ただし、気をつけたいのは、「全部」は名詞でありながら副詞的な用法も可能であるということ。
したがって、「犯行を全て白状しろ!」を「犯行を全部白状しろ!」でも大丈夫なのです。
「仕事が全部終わった」も「終わった」を詳しく飾っていますので、副詞的な用法ということ。
「全て」は「名詞と副詞」、「全部」は「名詞」といったハッキリとした違いがありながら、意味はほとんど同じになってしまうのです。
ただし、「全部」には「全て」にはない、独自の意味があります。
それは、一揃いになっている書物の全冊のこと。
この「全部」は、書物限定の言葉ということです。
そして、この「全部」の「部」は、「部分」や「一部」の「部」ではなく、印刷物に使う「部数」の「部」。
つまり、印刷した書物の一冊を「1部」として、全冊揃ったということです。
もしかしたら、「全部」という言葉の由来は、この書物の意味だったのかもしれませんね。
③「全て」と「全部」の違いを整理!
それでは、ここで一度「全て」と「全部」の違いを整理します。
名詞の「全て」は「いっさい」「みんな」という意味、副詞の「全て」は「何もかも」「残らず」という2つの意味があります。
「いっさい」「みんな」「何もかも」「残らず」、いずれも意味は似てはいますが、使い方に違いがあるということ。
「ある物事のみんな」という意味と、「一揃いになっている書物の全冊」という2つの意味があるのが「全部」。
「全部」の「ある物事のみんな」という意味は、「全て」の意味とほぼ同じといえます。
2.「全て」と「全部」の辞書での意味!
続いて、辞書による「全て」と「全部」の意味がどうなっているのか確認していきます。
①「全て」の辞書での意味!
【全て】
①(名)全体。全部。いっさい。「―を失う」
②(副)ことごとく。何もかも。「やることなすこと―成功した」
引用元:旺文社国語辞典
説明したとおり、名詞と副詞でそれぞれの意味があります。
②「全部」の辞書での意味!
【全部】
①物事のすべて。すべての部分を含む全体。副詞的にも用いる。「話を―聞く」「―君の責任だ」↔一部
②ひとそろいになっている書物などのすべて。
引用元:旺文社国語辞典
「全部」も意味が2つで、内容も説明どおりですね。
3.「全て」と「全部」の使い方!
次に、「全て」と「全部」の使い方を例文で紹介します。
①「全て」の使い方!
・全ては一握りのお金のために…という出稼ぎ労働者たちの実態。
・全てが親子の悪い関係からうまれることなのかもしれません。
・加えて3つの賞を全て獲得するということは前例がない。
・東北三大祭り全てが中止となってしまう。
②「全部」の使い方!
・全部が暗号化されているわけではない。
・首里城の中心になっている正殿など、全部で7つの建物が焼けました。
・書籍のシリーズ全部を無料で公開するという行為自体は、珍しい手法ではない。
・前にむし歯は全部治したので、今は問題ないと思います。
4.「全て」や「全部」には似た意味の言葉がたくさんある!
「全て」や「全部」には似た意味の言葉がたくさんありますよ。
下の関連記事も、覗いてみてください。
ぜひ、参考にしてみてくださいね。
まとめ
以上が、「全て」と「全部」の意味の違いと使い分けについてでした。
名詞の「いっさい」「みんな」、副詞の「何もかも」「残らず」という意味があるのが「全て」。
「ある物事のみんな」という意味と、「一揃いになっている書物の全冊」という意味があるのが「全部」。
「全部」は名詞ですが副詞的な使い方もしますので、「全て」とほぼ同じ意味といえます。
ただし、「一揃いになっている書物の全冊」という意味は「全部」独自の意味です。